トヨタの決算発表

トヨタの決算が発表になりまして、18年振りに2期連続の減収減益だそうです。大きいのは為替の影響みたいですが、トヨタの減益ってあちこちのニュースで取り上げられるので、日本中でいろいろな人が心配しているんだなぁということが分かります。かくいう私も、あまり関係ないヨソ様の決算で、ちょっと言い表せない微妙に不安な気持ちになっており、これをあえて言葉にしておきたいなぁと思います。

 

個人的にはまったく関係ないヨソの会社の決算がこんなに気になるのは、もう日本の経済は自動車頼みで、その自動車産業のエースはトヨタだからだと単純に思ってました。日本が今世紀も今の経済的なポジションを何とか保持できるかどうかはトヨタをはじめとする自動車にかかっているという、こっちの勝手な期待が、2期連続の減収減益と聞いて、大丈夫?という気持ちにさせるのかと思っていたんですが、それだけじゃなかったんです。

 

まず、数字そのものを見れば相変わらず立派な決算です。27兆円以上の売上を上げて2兆円に近い営業利益です。率にして7.2%といえば、申し分の無い経営状態だと思います。これだけ見ると不安を感じる要素は全くない。でもトヨタは対外的なポーズではなく本当に反省しているというか、難しい課題に直面していることを認識しているのです。その問題の数とか大きさとか複雑さとか、そういったことは当のトヨタでないと分からなくて、トヨタの中でもそういう全体像が見えている人は限られていて、決算発表で前に出てしゃべっているあの人たちにも、全体像は見えている一方で課題の細かいところなんてとても見きれていなくて、それが豊田章男さんが冒頭に言っていた「大きくなりすぎた」という表現に現れているんだと思います。でもそういった言葉やスライドで表現しきれない微妙なニュアンスの部分も、数字やファクトや人柄や醸し出されるトヨタらしさ?でキチンと伝わって来た良い決算発表会だったと、後から動画を見て思いました。

 

トヨタは本当に果敢な挑戦をしていると思います。これまでの数十年間でトヨタが率先して築き上げて来た日本車の”機能に特化した”イメージを自ら打ち破り、もっとセクシーさとか、走りの良さとか、乗る人の感性にも訴えるようなよいクルマを作ろうと取り組みをしつつ、これからやってくるパラダイムシフトを超えようというのです。パラダイムシフトとしてはエネルギーの転換とか、人工知能の発達といったものが既に見えて来ていて、今までにない次元での競争を余儀なくされている。それでも積極的に未来のクルマ社会を自ら描きつつ、その未来の中でも社会を支える主要プレイヤーであり続けようという意思を表明している。

 

こういう思想や視点は先頭を走っていないと獲得できないんです。誰の真似でもなく自分の頭で考え、描いた未来像を目指すという姿勢。そしてそのリスクは他でもない自分たちでマネージしなければいけないということを請け負う覚悟。それをやりきろうというトヨタの意思を感じながら、その動きに自分が参加できていない負い目というか、トヨタ1社に頼らざるを得ない自分たち日本人の不安が投影された決算発表だったのではないかと思った次第です。だから今年は特に気になっちゃうんですね。

 

ソフトバンクの決算も発表されましたけど、ソフトバンクが日本の将来を背負ってくれそうには見えないのも、孫さんがもう世界全体を背負おうとしちゃっているからなんだなと思ってて気付きました。はい。