ダニング・クルーガーエフェクトに出会った Dunning-Kruger Effect

 
 
ダニング・クルーガー効果のグラフである。
 
Twitterでこのグラフに目が止まり、ここ数年の違和感が説明できるようになった気がするのでメモしておきたい。特にゆとり、さとり世代で増えたと言われる、仕事で伸びない、残念な若者に対して感じていたモヤモヤが一気に晴れた。なお私はゆとり、さとり世代でも死ぬほど仕事ができる向上心の塊に見える若者を多数知っており、彼らを尊敬もしているオッサンであることを申し添えておきたい。
 
私が長年、説明をしたかった現象は2010〜11年くらい以降の新人に見られるようになった現象で、ゆとりとか、さとりと呼ばれる世代の若者、特に日本以外で教育を受けた経験がある人に多く見られる現象なんだが、このグラフの谷の部分を超えてこっち側にこない人が増えているように感じている。
 
縦軸のConfidence(自信)が一定レベル(点線で示されているレベルが大体の目安)より下がるようなチャレンジ・経験を敢えてはしないし、将来的にチャレンジすることも考えていないという態度。避け続けるからExpertにはならない。当然、仕事のアウトプットもExpertのそれには及ばないんだけど、チャレンジしないから自分の自信だけは守れている。自分や自分の所属する組織のアウトプットが、クライアントや後工程から要求されているレベルに達していなくても、自分の自信だけは守り、全能感に近い自己肯定感を肥大化させている案件に出会すようになった。無論、自己肯定感は大事だ。それがないと生きて行けないつらい日も人生には確かにある。だから、そのまま、ありのままでも十分に素晴らしいとも言えるし、素晴らしい教育を受けているとも感じるが、少しだけ疑ってみて欲しいと思うオッサンがここにいるので、片耳だけでいいから貸して欲しい。
 
例えば、なんとかしなければいけない業務上の課題が目の前に提示された時、もしくはその存在(←いわゆる、部屋の中の象ね)に気づいた時、その課題に彼らがどう向き合うのか?を見ると、優先順位としては自分を守ることが先にくる。守るべき自分の自信を守るという陣地を確保した上で、その砦の中から目の前の課題を指で指して、私には手に負えないので、マネージャーであるあなたの手でどかしてもらっていいですか?と、彼らは声高に、こちらに指示してくる。それは大体、指示に見えるんだよ。平たくいうと「お前どかせや、そのクソ危ない地雷」と言っている態度に見えることが多い。言葉は丁寧なことが多いけど。
 
その課題が確かに年次や経験から考えて困難なモノであれば、こちらも違和感を覚えないし、処理できる大きさに切り分けて与える苦労(いわゆる子供に対するお口ア〜ンである)も厭わないのだが、そういう姿勢の若者は年次が上がっても同じ姿勢を貫き一向に成長しない。このグラフで言うところのExpert側に経験値を積み上げては来ないからである。そちらに向かって進むとグラフを見てもらうと分かるが、自信はどんどん下り坂となるのだ。それが彼らには怖くて経験がつめないようなのである。
 
こうしていつまで経っても新人と変わらない中堅が育つ。そういう構造が温存されることが、本当に増えてきている。
 
2年くらい前、典型的に新人時代から進歩しない後輩に「あなたは、今の心構えで仕事してたら仕事での成長を知らないまま歳を重ねるよ。」という苦言を呈したことがあった。彼女の方から「いつまでも同じ仕事をさせられていて、つまらない」「私だって次のステップに進みたい」「大きい仕事を任される、一つ上の先輩が羨ましい」と言われ、何とか彼女に届く言葉を選んで説得を試みたが、彼女が待っていたのは今のままの彼女を褒めちぎる言葉だったようで一向に私のアドバイスは聞いてくれなかった。根負けして、これはダメだなと諦め半分で伝えたのが、あなたの心構えがよくないという指摘だった。彼女は怒って、「年上だからって失礼ですね。ちゃんと成長してます。」と怒って話は終わってしまったが、その伝えたかった現象を客観的にうまく伝えるならば、このダニング・クルーガーエフェクトのグラフはとても使いやすいと思った。
 
そんな彼女も、今月で会社を辞めるらしい。行き先は知らないが、どこかで気付けることを祈っている。なんなら、彼女に届いて欲しいから、こんなブログを書いている。
 
若いうちに、失敗する自由を行使しないで、いつ成長するんだろう?歳をとってから、実損を出しながら、なんなら最悪は会社を潰しながら覚えるんだろうか?そうならないことを祈るばかりだ。心配性の氷河期世代からの、余計なお節介である。
 
気に障ったら、画面を閉じて忘れてください。