マネジメントと現場の距離

 

ゴールデンウィークも、残りわずかとなって参りました。祝日の無い6月を超え7月の夏休みまで突っ走る心の準備は出来ていますか?出来ていない人は6月にも小連休を自分で作れるように画策しましょうね。

 

さて、仕事が本格的に始まる前の今日、どうしても書いておきたかったのがタイトルの話です。これって人によってまったく距離感の置き方が違って、上司が変わるたびに振り回される指標の1つですよね。現物現場を標榜して、何でもかんでも現物確認しないと気が済まないタイプの人から、放任タイプの人まで、その上司の更に上の上司の考え方にも左右されるので結構細かいケアが要求されるテーマだったりします。受け持つ現場が物理的に少なければ過去に一番細かかった上司の要求に耐え得る現状把握を心がければいいんですが、こちらも現場を複数見ていてそんな余裕がもてなかったりします。手を抜く時は、「上司の上司からそれ以上は突っ込まれない」という程度の現状把握を心がけると、社会人としては×はつかない身の処し方が出来ると思います。

 

話がそれました。書いておきたかったのはそんな小手先の話ではなく、まだ若かりし頃に当時の先輩から教えてもらったある社長の話です。私は若かりし頃に建築関係の業界で営業職をしており、その先輩は同じ営業でしたが一級建築士の資格を持つ人でした。その先輩自身が最初に社会人になった時に務めていた会社の社長の話をしてくれて、とても参考になったのです。

 

それは先輩が社員10名程度の建築会社の社長面接に行った時の話。面接中に社長宛に建築現場に行っている若手社員から相談の電話がかかって来たそうです。内容は専門的になるので割愛しますが、そのやり取りで社長は見事に的確なアドバイスを若手に与えて電話を切った後、面接に来ていた先輩に「彼は現場にいるけど現場が見えてないんだよ、でも俺は現場にいないけど現場が見えているんだよ」と言ったそうです。そのやり取りを見て、その会社への入社を先輩は決めたそうです。

 

この話を聞いた当時の私は売れっ子で、常に2〜5つの現場を同時に抱えて、複数の職人さんやエンジニアを遠隔操作しながら四苦八苦していました。そんな私にはこの話は正に金言でした。現場に行かずに上手に現場を回すためには、現場にいる人よりも現場のことを知ればいいんだ、それが出来ている人が世の中にはいるんだと思ったら、なんだかやれる気がして来たのです。最終的に、私は職人さんやエンジニア、設計、工場に何を言われてもキチンと答えられるように自分で図面を引き、計算書を作り、工程表を作り、搬入計画書を作り、工事の作業も一回は体験してみることを心がけるようになりました。

 

そうしてしばらく経つと、相手が訴える苦悩がすごく良く理解できるようになったのです。理解した上でお願いすると、相手もある程度は無理を聞いてくれるようになったり、私が気にかけているだろうなぁと思うことは向こうの方から先に報告してくれるようになりました。若いと建築現場ではなめられたりするのが当たり前ですが、実力社会なので、自分の実力や困りごとを分かってくれる人のことはむしろ尊重してくれる世界なのです。これは建築以外の職人さんやエンジニアの世界でも同じなのではないでしょうか?

 

この私が体得した泥臭いマネジメントスタイル。立派な会社にお勤めの皆さんには参考にならないだろうと心の奥底でずっと温めてきましたが、最近になって大手の会社でも求められているように感じています。それは社会の流れが随分と早くなってしまい、現場の即断即決でないと現実に対処できなくなっているからです。

 

スタバのハワードシュルツさんとかセブンイレブンの鈴木元会長も、そういう現場感覚をお持ちの人だと思います。マネジメントに携わる人の努力とか、敢えて言うと力量で、現場との距離は限りなく「0」に近づけることが出来ます。当事者になろう!と決めさえすればいいのです。また当事者になれる人は、ならないやり方も選択できます。

 

今、中小企業で日々の厳しい現実に悪戦苦闘している皆さん、あなた達の時代が近づいて来ていますよ。そういう大きな変化の波が、すぐそこまで来ていると思います。4つ目の産業革命の波、うまく生かしたいですね。